1948年、イスラエルが建国され、70万人以上のパレスチナ人が難民となった。動乱の中東で、人々が“NAKBA(大惨事)”と呼ぶ事件が起こっていたことを世界のどれほど多くの人が知っているだろうか…。孤高のジャーナリストが40年にわたり取材をした膨大な記録が一篇のドキュメンタリー映画として結実、歴史の闇に閉ざされようとする真実に一条の光を投げかける傑作が誕生した。
フォトジャーナリスト・広河隆一。現在、報道写真月刊誌「DAYS JAPAN」の編集長を務め、数々の戦場を取材し続けてきた。“被害者側にどんなことが起こっているのか。それを調べ、伝えるのがジャーナリストの役割”を信念とする彼は、40年間パレスチナ問題を追い続けてきた。その間に撮りためてきた写真は数万枚、映像は1000時間を越える。しかしその多くが、マスメディアの限界にぶつかり、未発表のままだった。その貴重な映像を映画として発表するため、2002年、有志による“「1コマ」サポーターズ”が発足。2008年、650名を超える人々に支えられた本作は、ついに完成を見た。パレスチナにおける戦乱と和平をめぐる動きを取材していくなかで記録された、廃墟となり地図から消えていった荒涼たるかつての村々の姿や、収容所での拷問や大虐殺の記憶、パレスチナとユダヤ双方の人々による生々しい証言。それらは“NAKBA=大惨事”の全貌を、静かに浮き彫りにしてゆく。
フランスやレバノンでも公開され高い評価を得た本作は、日本全国20館以上で上映、「ぴあ」満足度ランキングで2位に輝くなど観客の心を掴み、ドキュメンタリー映画としては異例とも言えるヒットを記録した。自主上映の動きは絶えることがなく、今も広がり続けている。
パレスチナ難民の発生は、イスラエルが誕生した1948年5月14日まで遡る。この年、420もの村々が消滅、廃墟となった。故郷を追われた人々のほとんどは、難民キャンプでの生活を強いられ、その過去を知らないキャンプ二世、三世が増え続けている。2008年、イスラエルは建国60年の節目を迎えた。しかし、パレスチナ人の暮らす場所を破壊し、彼らを追放しようという動きは、いまなお続いている。廃墟を訪ね証言を記録する広河の旅も、まだ終わっていない。